ベトナムでは果物に塩を付けて食べる!?その理由と文化の背景
今日はちょっと不思議に思うかもしれないベトナムの食文化、「果物に塩をつけて食べる」という習慣について紹介します。
初めて聞いた人はきっと「えっ、果物に塩!?」と驚くでしょう。
でもベトナムではとても一般的で、屋台や家庭でも当たり前のように見られる食べ方です。
私も最初は半信半疑でしたが食べてみるとその理由がよく分かりました。
果物+塩=ベトナム流の“味変”
日本では果物といえば「甘いもの」「デザート」というイメージが強いですよね。
でもベトナムでは果物を「おやつ」や「軽食」として食べる文化があります。
だから甘いだけでなく、「しょっぱい」「酸っぱい」「辛い」といった刺激を足して味のバランスを楽しむのです。
代表的なのが「muối ớt(ムオイ・オッ)」と呼ばれるスパイス。
直訳すると「唐辛子入りの塩」で、塩に唐辛子の粉や砂糖、ライムの皮などを混ぜたものです。
果物屋の屋台では、パイナップルやマンゴー、グァバなどを切ってくれて、そこにこの塩をちょっと振りかけて渡してくれます。
なぜ塩をつけるのか?
理由はいくつかありますが、主に次の3つが挙げられます。
① 甘みを引き立てる
塩を少し加えることで、果物の甘さがより際立ちます。
これは日本でもスイカに塩を振るのと同じ理屈ですね。
塩味が加わることで舌が甘味を感じやすくなり、味のコントラストが生まれます。
② 酸味・渋味を中和する
ベトナムでは熟す前の少し酸っぱい果物を食べることが多いです。
たとえば青いマンゴーやグァバなど。
そうした果物はそのままだと酸味や渋味が強いのですが、塩をつけることで角が取れて食べやすくなります。
③ 暑い気候に合う
一年を通して暑いベトナムでは、汗を多くかくため、塩分補給も大事です。
果物と一緒に塩を摂るのは、自然と理にかなった食習慣でもあります。
さっぱりした果物に塩味が加わると、体が喜ぶような感覚があります。
ベトナムで人気の“塩フルーツ”5選
ここで、実際によく見かける組み合わせをいくつか紹介します。
| 果物 | ベトナム語 | 特徴 |
|---|---|---|
| 青マンゴー | xoài xanh(ソアイ・サイン) | 酸味が強く、塩+唐辛子でスナック感覚 |
| グァバ | ổi(オイ) | シャキシャキ食感。少し塩気を足すと止まらない |
| パイナップル | dứa(ズア) | 甘酸っぱくて塩がよく合う。冷やすと最高 |
| スイカ | dưa hấu(ズアハウ) | 日本同様、塩で甘みアップ |
| タマリンド | me(メー) | 酸味が強いので、塩と砂糖をまぜたディップが定番 |
どれも「え、そんな食べ方あるの?」と思うかもしれませんが、実際に試すとクセになります。
特に青マンゴーに塩唐辛子をつけたものは、まるで“南国のスナック”のよう。
少しピリッとして、甘酸っぱくて、手が止まりません。
どこで食べられるの?
ベトナムでは街角の屋台や市場、ショッピングモールのフードコートなど、あちこちで見かけます。
透明なカップに果物が盛られていて、小さな袋に塩が添えられていることが多いです。
買ってすぐに混ぜて食べるスタイル。
暑い日には冷たい果物と塩の組み合わせが最高のリフレッシュになります。
家庭でも食後のデザートとして塩を少し添えるのが定番です。
家族や友人とおしゃべりしながら、果物を塩にちょんとつけてつまむ──そんな光景がよく見られます。
日本人の感覚から見た「塩フルーツ」
私自身、最初に妻の実家で出されたときは正直びっくりしました。
青いマンゴーに真っ赤な唐辛子入りの塩がかかっていたんです。
「辛そう…」と思いながら食べてみると、これが意外にうまい。
辛さよりも果物の甘みと酸味が一段と立ってやみつきになります。
それ以来、日本に帰るときも「muối ớt」をお土産に買って帰るようになりました。
最近は日本のベトナム食材店やネットでも手に入るので気軽に試せます。
青マンゴーが手に入らなくても、リンゴやパイナップルでも十分楽しめますよ。
味だけじゃない、“共有する文化”
この「果物に塩をつけて食べる」文化の面白いところは、単なる味の工夫ではなく人と分け合う習慣にもつながっていることです。
ベトナムでは果物を買ったらみんなで分けて食べるのが普通。
ひとつの皿に果物を盛ってみんなでつまむ。
塩や唐辛子を混ぜながら「これちょっと辛いね」「このマンゴー甘いよ」と笑い合う。
そこに自然なコミュニケーションが生まれます。
日本だと果物は“個人のデザート”という感じですが、ベトナムでは“みんなで食べるおやつ”。
そう考えると、塩をつけて味を共有するのも、なんだか納得できる気がします。
まとめ:一口で南国気分
「果物に塩をつける」というと最初は違和感がありますが、ベトナムではそれが自然で文化の一部です。
甘味と塩味、酸味と辛味が混ざり合う複雑な味わいはまさに東南アジアらしい“調和の妙”。
日本でも試してみる価値はあります。
スイカに塩、パイナップルに塩+唐辛子、リンゴに少しライム塩──
最初の一口で「ん?」となり、二口目で「なるほど」となるはずです。
単なる味の違いではなく、そこに暮らしの知恵や気候への順応、そして人とのつながりが見える。
そんな小さな一皿に、ベトナムの文化がぎゅっと詰まっているのです。

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