日本語とベトナム語はこんなに違う!文法&表現の比較
日本語とベトナム語。
どちらもアジアの言語ですが、文の組み立ても、言葉の感じ方も驚くほど違います。
実際にベトナム語を勉強してみると、「えっ、そう考えるのか!」と感心する瞬間が何度もあります。
今回は、日本語とベトナム語の“違いが面白い”ポイントを、いくつかの切り口から紹介します。
1. 語順の違い ─ 日本語は「後ろから」、ベトナム語は「前から」
日本語は文の要素が“後ろに寄る”言語です。
たとえば「私はリンゴを食べます」という文。
動詞(食べます)が最後に来ていますね。
一方、ベトナム語では基本語順が 「主語+動詞+目的語(SVO)」。
つまり「Tôi ăn táo(私はリンゴを食べる)」と、英語と同じ順番になります。
| 意味 | 日本語 | ベトナム語 |
|---|---|---|
| 私はリンゴを食べます | 私は リンゴを 食べます | Tôi ăn táo |
最初はこの語順の違いが混乱のもと。
でも慣れてくると、ベトナム語の“直線的でスッキリした構造”が心地よく感じられるようになります。
2. 助詞がない ─ 「が」「を」「に」が存在しない世界
日本語では「が」「を」「に」「で」などの助詞が文の意味を支えています。
しかしベトナム語には助詞がありません。
その代わり、語順と文脈で関係を判断します。
たとえば:
-
Tôi học tiếng Nhật.(私は日本語を勉強します)
→ “tiếng Nhật(日本語)”の位置で「を」を補って理解します。
助詞がないおかげで文が簡潔になる一方、語順を間違えると意味が通じなくなります。
「自由に並べられる日本語」と「順番命のベトナム語」──まるで真逆の発想です。
3. 動詞の変化がない ─「食べます」も「食べた」も同じ
日本語では「食べる→食べた→食べよう→食べない」と、動詞がどんどん変化します。
一方、ベトナム語の動詞はまったく変化しません。
たとえば「ăn(食べる)」はどんな時も“ăn”のまま。
時制を表すときは、前に副詞や助動詞を置きます。
| 意味 | ベトナム語 | 読み方 |
|---|---|---|
| 食べる | ăn | アン |
| 食べた | đã ăn | ダー・アン |
| 食べている | đang ăn | ダン・アン |
| 食べるだろう | sẽ ăn | セー・アン |
つまり「動詞を変える」のではなく、「時間のキーワードを足す」方式。
シンプルで理屈が通っています。
日本語が“活用の芸術”なら、ベトナム語は“単語の組み合わせの技”です。
4. 敬語の代わりに「人称」を使う
日本語は敬語が命。
話す相手によって「食べる」「召し上がる」「いただく」と使い分けます。
ベトナム語には日本語のような敬語体系はありませんが、その代わりに人称代名詞が社会関係を表すという特徴があります。
たとえば:
-
私 → anh(兄・男性が使う)/em(年下)/tôi(中立的)など
-
あなた → em(年下)/anh(年上の男性)/chị(年上の女性)など
つまり、**相手との関係性を選ぶこと自体が“敬語”**になるのです。
これは日本語の“言葉遣いで距離感を測る”感覚に通じるところもあり、文化的な奥深さを感じます。
5. 単語の構造 ─ ベトナム語は「漢字の影響」を強く受けている
実はベトナム語には、かつて「チュノム(𡨸喃)」という漢字文化がありました。
その名残で、今も日本語と同じ由来の単語がたくさんあります。
| 日本語 | ベトナム語 | 発音 |
|---|---|---|
| 学生 | học sinh | ホック・シン |
| 先生 | giáo viên | ザオ・ヴィエン |
| 会社 | công ty | コン・ティー |
| 経済 | kinh tế | キン・テー |
「音も意味も似ている!」と気づくと、勉強が一気に楽しくなります。
同じ漢字圏の影響を受けつつも、独自の音とリズムを持つ──そこにベトナム語の美しさがあります。
6. 感情表現の違い ─「言葉に出す」ベトナム語、「察する」日本語
文化的な違いが最も出るのが感情表現。
日本語では「空気を読む」「言わなくても伝わる」が美徳とされますが、ベトナム語では感情をはっきり言葉にするのが自然です。
たとえば:
-
Thật vui!(うれしい!)
-
Buồn quá…(とても悲しい…)
-
Cảm ơn nhiều!(本当にありがとう!)
日本人にとっては少しストレートに聞こえる表現も、ベトナム語では日常会話の中でごく普通。
“心の距離の近さ”を感じる言語です。
7. 発音の壁 ─ 声調が意味を変える
最後に、学習者を悩ませるのが**声調(トーン)**です。
ベトナム語は6つの声調があり、同じ音でも声の上がり下がりで意味が変わります。
たとえば:
-
ma(幽霊)
-
má(母)
-
mà(しかし)
-
mã(コード)
……まるで音楽のようですね。
日本語に声調の概念はないので最初は難しいですが、慣れると微妙な音の違いを聞き分けられるようになります。
まとめ:違いを知るほど、面白くなる
こうして比べてみると、日本語とベトナム語は“構造も文化も”まったく違います。
でもその違いこそが、学ぶ楽しさでもあります。
文法のシンプルさに驚き、表現のストレートさに感心し、
自分の母語を改めて見直す──そんな体験が、言語学習の醍醐味でしょう。
「日本語の裏側にある考え方」や「ベトナム語の柔らかさ」に気づくたび、
少しずつ世界が広がっていく。
違いを楽しむことが、上達への一番の近道です。

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