ベトナム語の“人称”は複雑?〜相手との関係性で変わる呼び方〜

ベトナム語

ベトナム語の“人称”は複雑すぎる?

〜年齢・関係性・親しさで変わる呼び方の世界〜


今回は私がベトナム語を学び始めたときに戸惑ったポイント──それは「人称の使い分け」についてお話しします。

英語であれば “I” と “you” で済むところが、ベトナム語では年齢・性別・関係性・親しさによって、すべてが変わるのです。
最初は「なんでこんなにあるの!?」と頭を抱えましたが、理解していくうちに、ベトナム人の“人との距離感”や“礼儀”がよく見えてくるようになりました。


■「私」にも10種類以上ある!?

ベトナム語では「私」を表す言葉がひとつではありません。
例をいくつかご紹介します。

人称 意味・使い方
Tôi 一般的な「私」。フォーマル〜中立的
Mình 仲のいい友人・恋人などの間で使うカジュアルな「私」
Anh 年上の男性に対しての「私」。「あなた」が年下の女性の場合
Em 年下の相手(恋人や親しい人)に使う「私」
Cháu おじさん・おばさん世代に対して、自分が「甥・姪」の立場になるとき
Con 親に対しての「私」=子どもという立場
Tớ 仲良し同士で使う「僕」っぽい感じ(子どもや若者同士)

つまり、自分をどう呼ぶかは「相手が誰か」によって変わるのです。


■「あなた」も10種類以上!?

「あなた」に当たる人称も同様にバリエーション豊かです。以下はその一例です。

人称 意味・使い方
Bạn 一般的な「あなた」。同年代や初対面にも使える
Anh 年上の男性に対しての「あなた」
Chị 年上の女性に対しての「あなた」
Em 年下の相手に対する呼びかけ
Cô / Chú 自分より上の世代(親世代)への呼び方(叔母・叔父)
Bác さらに年上の年配者(祖父母世代)に対して使う
Thầy / Cô 先生への呼び方(男性=Thầy、女性=Cô)

これらは、相手への敬意・親しみ・立場を示す大切な言葉なんです。


■ 呼び方=その人との関係そのもの

例えば、夫婦間でも呼び方が変わります。

  • 妻が夫を「Anh(年上のあなた)」と呼び、

  • 夫は妻を「Em(年下のあなた)」と呼ぶ。

恋人でも同じようなやり取りをします。
つまり、ベトナム語の人称は単なる言葉ではなく、「二人の関係のかたち」そのものを表しているんですね。


■ 間違えるとどうなる?

「Tôi」や「Bạn」で統一すればいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、それでも通じます。でも、ちょっと距離がある・よそよそしい印象になってしまうことも。

一方で、間違った人称を使うと、失礼になってしまったり、相手に「私のことをわかっていない」と思わせてしまうこともあるため、注意が必要です。


■ 結論:「人称の複雑さ」はベトナム文化の奥深さそのもの

最初は面倒に感じたベトナム語の人称ですが、慣れてくるととても人間味があって、相手への思いやりが詰まった言語表現だと感じるようになりました。

距離感を大切にする文化だからこそ、呼び方一つひとつに意味がある。
それが、ベトナム語の奥深さであり、美しさでもあるのです。


📌 おまけ:覚えておくと便利な組み合わせ例

自分 → 相手 「私」 「あなた」
年下男性 → 年上女性 Em Chị
年上女性 → 年下男性 Chị Em
同年代の友人同士 Mình Bạn
恋人(年下女性) → 年上男性 Em Anh
親 → 子ども Mẹ / Ba Con
生徒 → 先生 Em / Cháu Thầy / Cô

ベトナム語を学ぶみなさん、まずは自分が誰に話しているのかを意識することから始めてみてくださいね。
人称マスターは、ベトナム語習得の第一歩です!

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